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相続手続に関するさまざまな事例のご紹介

遺言による手続き 事例14

 2通の遺言書

相談者
姪B
被相続人 A の遺産
(1) 不動産
(2) 定期預金(9000万円) (6銀行、10口座)
(3) 株式
法定相続人
姪B、甥C、甥Dの3名
問題点
(1)自筆証書遺言が2通あり(遺言執行者の指定なし)
(2)甲金融機関が解約に応じない。

このケースの問題点

自筆証書遺言が2通ある場合、原則直近の遺言書が効力を持ちます。

そのため、直近に作成された遺言のとおりに遺産の移転をすることになりますが、最初に作成された遺言書により一人で相続できると思っていた甥Dとの間で軋轢が生まれ(直近の遺言で姪B一人に相続させるとなっていたため!!)争族状態となり、親族間に禍根を残すこととなりました。  

因みに、今回の法定相続人は甥姪のため、遺言書でもって遺産の全部を特定の者に相続させるとした場合、遺留分の問題は生じません。

解約に応じない甲金融機関に対しては、訴訟も視野に入れて検討する必要がありました。

このケースの解決事例

【1】『遺言書の検認』を行う。
 (検認の手続はおよそ1ヶ月前後を要する。)
 ↓
【2】検認の手続が完了後、『遺言執行者の選任』を申立てる。
 (遺言執行者の選任もおよそ1ヶ月前後を要する。)
 ↓
【3】不動産の名義変更の手続、定期預金の手続完了(およそ6ヶ月)
 ↓
【4】相続税の申告・納付

相続手続完了までの期間:およそ9ヶ月

『遺言書の検認』を終えた後、遺言執行者選任の申立を行います。
遺言執行者の候補者は姪Bとなります。
姪Bが、遺言執行者として選任されれば、手続がスムーズに進みます。
手続きを進める上で唯一問題となったのが、甲金融機関1社だけが『遺言書が2通あり、一方から手続きをしないで欲しいとの依頼があったため、双方からの承諾がない限り解約には応じられない』との姿勢を示したことです。
甲金融機関の対応にはある一定の理解はできますが、遺言執行者も選任されており、執行することを妨げていることになるので、解約に応じるように時間をかけてやり取りを行いました。
今回は特殊な事案でありましたが、結局甲金融機関も解約に応じることとなりました。

ポイント

遺言書が2通あると、どうしても禍根を残すことになりますし、手続き先においても『実務上の判断』が難しい案件となってしまうことになります。
遺言書を作成する際には、慎重に。また、遺言書を書き換えるならば、出来るだけ配慮をしたものを作成することを考える必要があるかもしれません。
このようなことにならない為にも、専門家に相談することをお勧めします。