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相続手続に関するさまざまな事例のご紹介

遺産分割協議 事例21

 相続人から遺留分減殺請求がきた

相談者
相続人B
Aの遺産
Aの遺産
(1)不動産
(2)預貯金(3000万円)
(3)株式(2000万円)
相続人
子B、子C、子D、の3名
問題点
(1)自筆証書遺言はあるが、子Bに全ての財産を相続させるとある。
(遺言執行者の指定あり)
(2)相続人である子Cが、『遺留分の減殺請求権を行使する』と書面にて送付してきた。

このケースの問題点

遺産の全てを一人の者に『相続させる』という遺言は、一般的によくある典型的な遺言の記載方法です。
特定の者に、遺産の全部を取得させる理由として、例えば先祖代々受け継いできた農業用地の細分化を防ぐこととあわせて、維持・管理等の費用にあてるためであったり、また、祭祀の承継(仏具やお墓)をお願いするため等の理由から、一人の者に遺産を集中させることもあります。

今回の件は、相続の手続きを終えた後に、相続人Cが、『自己の遺留分を侵害しているから、その侵害している部分を請求する』ということですが、『亡くなった方の面倒は見なかったのに、権利だけを主張する相続人』に対して、親族の嫌悪感情は必然的に高くなっておりました。

本来は、遺言者自身の財産なのだから、それをどう処分しようが自由であるはずなのです。しかし、他方で、残された遺族の生活保障等の理由もあり、民法では遺留分制度を設けているのです。

これによって、財産の処分を一定限度制限し、相続人の保護を図ることとされているのですが、この遺留分制度のあり方について、昨今の核家族化等により、個々が独立した経済力をもっているはずであると考えると、この制度自体は不要ではないのか?というような意見も散見します。

しかし、いくら悩んで考えてみても、遺留分制度が民法で定められている以上、今回の遺留分の減殺請求には、ある一定限度応じなければならないのが実体です。

このケースの解決事例

【1】『遺言書の検認』を行う。(検認の手続はおよそ1ヶ月前後を要する。)
 ↓
【2】検認の手続が完了後、遺産の移転の手続き。
 ↓
【3】不動産の名義変更の手続、定期預金の手続完了(ここまでおよそ2ヶ月)
 ↓
【4】遺留分の減殺請求を受け、調停となる。
 ↓
【5】調停成立

 完了までの期間:およそ8ヶ月

まずは、『遺言書の検認』を申し立てる。その後、遺言書に基づき遺産の移転を完了。
その後、遺留分の減殺請求を受けた。
遺留分の減殺請求に対して、どのように対処するかを相談した結果、調停による解決の選択をすることとなったため、当センターから弁護士へ橋渡しを行う。

ポイント

今回のケースは、遺言書があったので遺言書の内容どおりに手続を完了しました。
その後、遺留分の減殺請求を受け、調停による解決に向けて動くこととなりました。
結果は、相続人Cが有する遺留分権に対して、それ相応の金銭を引き渡すことで決着となりました。

遺留分の減殺請求を受けると、応じなければならないのが実体であるため、時間・労力・費用などの負担をできるだけ最小限にするために、早期に解決することが望ましいと思われます。

遺留分の減殺請求についての当センターの考え方ですが、遺留分の減殺請求自体が、良い、悪いということではありません。
権利なのですから、行使すべきはすべきです。
しかし、その権利を行使しようとする者が、義務は怠る者であり、かつ社会通念に照らして、疑問を抱か
ざるを得ない人物または内容であった場合、ご相談をお断りさせていただく場合もあります。