遺言書で出来ることの一つに、「負担付遺贈」というものがあります。
「負担付遺贈」とは、特定の受遺者(遺贈を受ける者)に対して、一定の負担・義務を負わせることで、遺言者の想いを実現できるようにするための一つの方法といえます。
(受遺者が相続人であれば、遺言書の書き方は「遺贈する」とせず「相続させる」とします。文言を変えるだけですが、手続上、非常に重要なポイントになります。)
この「負担と義務」とは、複数相続人がいる場合、例えば、特に長男に対して特定の不動産を相続させるとする代わりに、遺言者の配偶者の世話をし、その配偶者に生活費として月々5万円を終生支払うよう申し入れたり、また、遺言者の子が未成年であった場合などは、その子が成人するまでの間、養育をして欲しいと申し入れるなどが挙げられます。
そして、遺言者の死亡後このような遺言を、受遺者が承諾すれば、負担・義務を履行しなければなりません。
ただし、この遺言により取得した遺産の価額の範囲内において、負担した義務を履行すればよいのであって無制限に負担を負うわけではありません。
また、この遺言による「負担付遺贈」は、遺言者の死亡後に自由に放棄することができますが、「包括遺贈する」とある遺言は注意が必要です。
この場合に放棄をしようと思うと、家庭裁判所で原則3ヶ月以内に「相続放棄」の手続きが必要となります。
理由は、「包括遺贈」を受けた者は、遺言者の借金などの債務まで受け継ぐなど、正に相続人と同等の地位に近くなるため、相続人と同じ取扱いをすることとなっているからです。
受遺者が「放棄」をした場合について、前記の例で「負担付遺贈」を受けた長男が「放棄」をする場合、その「負担付遺贈」により利益を受けることになっている配偶者が不動産を取得することもできます。
ただし、遺言者が遺言書に別の意向を明らかにしている場合はその意向に沿うこととなります。
さて、「負担付遺贈」の承諾をした者が、遺産を受取ったにもかかわらず、負担義務を履行しない場合が問題になります。
受遺者が負担・義務を履行しないからといって「遺贈」の効力が生じないというわけではありません。
この場合に、負担義務を履行させようとすると、遺言者の相続人が受遺者に対して履行することを請求することになります。それにも応じない場合は、家庭裁判所に対して遺言の取り消しを請求することも可能です。
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