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相続手続に関するさまざまな事例のご紹介

遺産分割協議 事例02

「成年後見人の選任」事例

相続財産
(1) 定期預金(250万円) 
相続人
B、C、Dの3名
問題点
(1) 遺言なし
(2) 相続人Dは生活保護受給者に加え認知症
(3) 親族内でDの後見人になる人がいない(拒否)

このケースの問題点

遺言書がない為、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)が必要。
しかし、相続人Dが認知症(意思決定能力がない)であり、遺産分割協議ができない状況にある。
  
このケースの手続き的な処理の仕方は、
(1)認知症の相続人Dに『後見人』を選任する。
(費用をかけられないので、兄弟Bに後見人になってもらう。

(2)兄弟Bが後見人になった後、『特別代理人』を選任する。
(後見人となった兄弟Bは、兄弟Dの後見人であると同時に相続人であるので、遺産分割協議をする上で
利益が相反する為、利害関係のない(相続人ではない)特別代理人を別途選任して遺産分割協議を行うことになる。)

通常はこの流れで処理するのだが、一番身近な兄弟の誰もが後見人候補としては拒否した。
その為、別途後見人を探す方法しかないが、専門家に依頼すれば当然経費がかかる。
しかし、遺産が少ない為、経費をかけることが出来ない。
また、遠方の為おいそれとすることが非常に難しい状況であった。

このケースの解決事例

【1】『後見人の選任』がなされた。
 ↓
【2】『遺産分割協議』を経て書面作成。
 ※ 相続手続完了までの期間:およそ10ヶ月

このケースは、正直諦めかけていたが、地元市長の申し立てで、司法書士が後見人に選任されたとの情報を入手した。
しかし、ここからもまた難しい問題が発生。
相続人Dが『生活保護受給者である』ということを後見人である司法書士から告げられた。

後見人が選任され遺産分割協議をするには、基本的には家庭裁判所の判断を仰ぐ必要がある。
家庭裁判所は相続人Dにとって不利益となる遺産分割は通常認めない。
そうなると、法定相続分での遺産分割になる。
法定相続分の遺産を受取ると、生活保護の受給を停止される恐れがある。
受取るに受取れない状況に陥ってしまった。

しかし、じっとしていても始まらないので、後見人の司法書士とやり取りをし、相続人Dにとっての最善を考えた結果、後見人司法書士が権利を放棄する方向で家庭裁判所の判断を仰いだ。
やはり家庭裁判所(裁判官)は難色を示したが、その後粘り強く説得を重ねおよそ8ヶ月ほどかかり最終的には結論を出し決着した。
この案件はたまたま費用をかけず、市長申し立てで同業の司法書士が後見人に選任され、意思疎通がうまく機能した偶然的要素のため解決ができた「運」の良かった事案でした。

ポイント

今回のケースは、相続人が兄弟姉妹であったので遺言書を作成しておけばよかった事案です。