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相続手続に関するさまざまな事例のご紹介

相続の生前対策 事例24

 障害者夫婦のための相続対策(相続の生前対策)

相談者
A、B(夫婦)
A・Bの財産
Aの財産
(1)不動産
(2)預貯金(およそ約7千万円)
Bの財産
(1)預貯金(およそ約1千万円)
問題点
(1)A及びBは、共に障害があるため、将来について深い不安を抱いている。
(2)子がない。
(3)賃貸収入で生計を立てているが、借家人からの賃料の入金が滞っている。

このケースの問題点

相談者AとBは、事故の後遺症により重度の障害があり、普段の生活はヘルパーなどの力を借りなければ生活できないような状況である。
その生活を支えているのが年金と賃料収入であるが、しばしば賃料の入金が滞ることがあった。

最近では3ヶ月以上も入金がないこともあり、生活を脅かす不安材料となっている。
現在は、自身でその支払いについて相手方と話をすることも難しい状況である。
その状況下で、AとBはそれぞれがお互い将来何かあった場合、残されたパートナーのことを案じるがゆえに、今出来ることをしておきたいとのことでのご相談です。

このケースの解決事例

【1】借家人に対して、未払い賃料の請求及び回収。(請求金額 金140万円以内)
 ↓
【2】AとB双方の遺言書作成。

 完了までの期間:およそ1ヶ月半

まずは、借家人に対し、未払いになっている賃料の請求をしました。
その過程で借家人からも事情をお聞きしながら、最善と思われる方法で未払い問題を処理。
同時に、今後賃料の未払いが発生した場合の取り決めを双方で合意し解決。

次に、AとB共に相続が発生した場合、相続人として兄弟姉妹も関与する遺産分割協議を避けるため、AとB双方の公正証書遺言を作成。
遺言を実行・処理する者として、遺言執行者も同時に定める。


ポイント

生活の基盤を脅かすこととなっていた賃料の未払いについて、借家人も高齢であること、当事者双方共に争いは望んでいないこと、また長年にわたる人間関係と同時に今後の関係についての配慮も必要であるため、事務処理的な考え方で処理することは望ましくないと思われました。
そこで、借家人との人間関係については出来る限りの配慮をし、借家人のご意向もお聞きしながら進めさせていただいた結果、賃料の変更や未払い金の減額をすることなく無事解決できました。

遺言については、子がない場合は双方の遺言書を作成すべきです。
(どちらが先に亡くなるかわからないからです。)
遺言がない場合、万一相続人間で争いになると、預金が下ろせない可能性があります。
死亡したことを銀行が知ると凍結するためですが、そのために当面の生活資金が底を尽く恐れがあります。

また、パートナーと共に築いた資産は老後の生活資金となります。
遺言がないと相続人間で遺産分割協議をし、労力を費やした上、その生活資金の一部が兄弟姉妹にわたることになることもあり得ます。
パートナーを思うなら必ず遺言を作成しておくべきです。

今回のケースでは、相続税にも備える必要があるのですが、諸事情もあり、現在できる対応が限られているため以上となりました。

生前の対策を考える際には知識と経験が必要です。
遺言書ひとつとっても、文言一つで思いがけない重大な結果を招くこともあります。

ご自身で勉強されて作成する際には、できるだけ事前に専門家に相談だけでもされることをお勧めします。